むかしむかし、960歳の大蛇がいました。

大蛇は生まれてから960年間、湯の花の鬼(酒吞童子)の手下として悪事を働き続けました。

しかし、ある日、都から来た坂田金時(さかたのきんとき)に打ち倒されてしまいました。

大蛇は山奥の谷に逃げ込みましたが、ついにそこで動けなくなりました。

大蛇は言いました。「これまで鬼の下で悪事しか働くことができなかった。せめてあと40年は楽しく、 人のために暮らしたい。」

それを聞いた山の神は言いました。

「あなたには大量の毒が溜まっています。 まずはこの毒消し草を食べなさい。」

草を食べると大蛇の体が動きました。そして体がつやつやと光りました。

さらに山の神は言いました。「あなたには鬼と決別する勇気が必要です。 鬼の住む山にある桜の形をした石を探しなさい。」

大蛇は山で桜の形をした石を見つけました。

心の底から勇気が湧いてきました。

また山の神は言いました。「あなたには人々につくすための知恵が必要です。 龍ヶ尾山の麓にある神社の坪庭の草を食べなさい。」

大蛇は神社の草を食べました。すると頭がどんどん冴えていきました。

大蛇は意を決して鬼に立ち向かい、都から鬼を追い出しました。

大蛇はその後、人々に感謝されながら、元気に暮らしました。

千年生きた大蛇は蛇神となり、山の神に代わって神聖な力で谷を守り続けているそうです。